僕の傘を探しに

26歳OLの雑記

恥ずかしくて題名がつけられない話

そしてあっという間に1ヶ月が過ぎた。
バチェラーデートのレートが1になった日だった。

泣き腫らした目で、死にそうになりながらメイクをし、しゅうたとのデートへ向かった。


場所は表参道。
向こうが人生酒場に行った際に勧めてくれた紅茶専門店へ向かった。

これは後から知った話だが、しゅうたは紅茶が好きだ。
関西出身で方向音痴な彼は一見店など全く知らなそうに見える。

でも大学時代に東京で何度か遊んだ経験があったため、良い雰囲気のお店を知っているようだった。


紅茶専門店へ入り、早速席に着いた。
しゅうたは久しぶりだからか、少しテンションが高いように感じた。

旅行の話や、いつも見ているyoutubeの話で盛り上がった。

私は寝る前に「右脳くん」という耳かきASMR動画を聴いてから寝る話をした。

彼はふざけて「それなら寝る前俺がささやけばええやん」とか、「そんなんでお金になるならイケボの友達にやらせようかな」と言った。

私は冗談が通じないタイプだ。

「本気なの?」と目を丸くして言うと、
「冗談にきまっとるやん。俺そこまでお金の使い方下手じゃな
いで」と呆れたように言った。

お金の話をするしゅうたの目は怖かった。
男性のプライドを傷つけるよ
うなことを言ってしまったのかもしれない。
怖い。どうしよう。

私が少し黙り込んでいると、あっという間に話は変わり、家事の話題になった。
向こうはさっきのお金どうこうの話はあまり気にしていないようだ。
私もとりあえずさっきのことは忘れることにした。

私は自炊も掃除も全くできなかった。というか、しゅうたと出会う前は興味
すら湧かなかった。
でも世間的には家事ができる女性のほうが良いとされている。
彼氏
ができればゆくゆくはなんとかしなければいけない問題だろうという認識は一応あった。
一人暮らし歴の長い彼に、しょっちゅう家事のコツを聞いていた。

この日はなんとかしなければな、と思っただけで行動を起こそうとまでは思わなかった。

さらに話題が変わり、しゅうたが普段仲良くしている友人の話をしてくれた。


いつも仲良くしている友人は、「恋人がいない」という話をするんだと、最初に教えてくれた。
友人といつも恋愛がうまくいかない話をしているようだった。

恐らくだが今はしていないだろう。
男性は恋愛でうまくいっていない話はするが、うまく行ってからの話はあまり共有しないらしい。

私の数少ない友人もいつも恋愛のことで悩んでいた。
彼のいつもいるコミュニティと私のいるコミュニティが少し似ていることに安堵していた。
その事実はマッチングアプリで出会っていなくても、もし奇跡的に出会えていたら友人くらいにはなれていたかもしれないという想像をさせるには十分だったからだ。

そんなこんなで話しているといつの間にか紅茶を飲み終わっていた

次はMOMAデザインストアに行く約束をした。
向こうがどこか行きたいところある?と聞いてくるので必死で絞り出した場所だった。
MOMAデザインストアに向かう途中、方向音痴な私は道に迷った

Googleマップに表示されている道の通りに歩くが、回りは見るからに住宅街だ。
こういう段取りが悪くて怒る男性もいる。私は叱られるのではないかとびくびくしていたが、向こうは笑っているだけだった。

到着後はデザインストア内を回った。

表参道デートにおすすめとネットで太鼓判を押されていたわりには、中は狭かった。
ただおもちゃから実用的なものまで変わったものが置いてあったのは覚えている。

中でレコードがかっこいいとか、ベッドサイドに置くような雑貨を見ながら快適な睡眠をとるにはどうしたら良いのかなど話しながら回った。

あっという間に見終わり、その後「少し歩いた先にいちょう並木が綺麗なところがあるから行こう」と誘われた。


この日は寒く、雨が降っていた。デザインストアを出るころには日は落ち、すっかり暗くなっていた。
悪天候の中でも行こうというのだから、よっぽど行きたいのだろう

なぜ行きたいかなど理由を聞かなくても分かった。
3回目のデートだ。社会人のデートでは3回目で告白する人が多い、というくだらないネットの記事を見たことがある。

さらに、デート前、友人にしゅうたのことを話してもいた。
鋭い友人は
「次、告白されるんじゃない?」と言っていたから察することができたのもある。

紅茶を飲んでいる時点で、私の気持ちは固まっていた。

デート中、自然に会話を楽しんでいた。しゅうたの話も面白かったし、なにより私のオタクくさいところを気に入ってくれていたのが嬉しかった。
木村良平とパク・ソジュンの話のときも、鬱陶しそうにしている素振りは全く見せなかった。

さらに、バチェラーデートでしゅうたと出会った後に5人会ったが、良いと思える人はいなかった。
むしろ、その5人と比べたら、しゅうたと
一緒にいる時間は楽しく、自分らしくいられるように感じていた。

寒いなか大分歩き、いちょう並木の場所へ到着した。
雨なので写真は撮らなかったが、少しまだ時期が早かったようで、最初は所々緑の葉っぱのままの部分もあった。
でも奥まで進んでみると、黄色く色が変わったいちょうたちが出迎えてくれた。

「綺麗だね」とありきたりな言葉を口にしてさらに歩く。

どのタイミングで切り出すのだろう。

そう思っていると、「奥までいくとさすがに戻ってくるの大変だから、このくらいで引き返そうか」と言われた。

綺麗に舗装された道、間隔をあけて置かれたベンチ、黄色いいちょうに囲まれた場所だった。

引き返しながら、「ももちゃんて今良いと思ってる人おるん?」と聞かれた。

きた。

素直に「いない」と答えた。
「俺もあと一人と食事に行ったけどその先は続いてなくて。もし今良い人いないなら付き合おうか。」

「好きです」とかじゃないんだ。遠回しな言い方に少しがっくりしたのは事実だったけれど、付き合いたいと思ってくれていることは嬉しかった。


しゅうたは不器用だ。この前自分でそう白状してきたのだから、間違いない。
王子様が言うようなセリフで女性を喜ばせるような術は持っていない。

そもそも、そんなことができていたら「俺は彼女できない」なんて友人に相談するわけがないのだ。
私も一時期彼に安心させてくれるような言葉を求めていた。でもできないことを求めても無駄だったし、彼は言葉より行動で気持ちを表すタイプの人間だった。


話を戻そう。

告白の返事は、どう返すのが正解なのか未だにわからない。

少しの間を置いて、「はい。よろしくお願いします」という言葉をやっと振り絞ることができた。
随分よそよそしい。でもそれしか思いつかなかった。

半年間頑張ってブログを続け、それなりに本を読んで語彙を集めているつもりではあったが、重要なときに限って言葉に詰まってしまう。
人生なんてそんなものだ。

いつも意図しないところで、思いもよらないことが起こる。その度に自分の気持ちを言葉で表そうとするが、そんな繊細で目に見えない、理解しきれていない感情など表現できるわけがない。ドラマのように人々の記憶に残るような台詞など出てこない。

「人生は後ろ向きにしか理解できないが、私たちは前を向いて生きるしかない」と私の愛読書に書いてあった。まさにこういうことなのだろう。

はたから見たらぎこちなかったが、今思い返せば、この言葉を振り絞っている瞬間が、この日は一番幸せに感じた。

ぎこちない告白と、ぎこちない返事。

不器用なのはしゅうただけでなく、私もだった。

不器用同士、奇跡的に意思の疎通に成功し、めでたく結ばれた。

告白を受け入れた後、途端に恥ずかしくなって黙り込んでしまった
あまりに私が黙り込んでいるので「まだ照れてるん?」としまいには呆れ
ていた。

そしてそのあとは一緒に食事をした。


しかし、表参道で油断は禁物だった。
食事するためにふらっと入った店はとてつもなく高く、向こうは愕然としていた。

結局夜ご飯は新宿まで戻って食べた。

新宿三丁目のカフェラボエムだ。
「君の名は」のモデルになった話はあまりにも有名すぎる。

しゅうたは表参道で良い店を見つけられなかったことを気にしていた。
怒ってないのに怒っているかしきりに確認してきた。
私は代わりの店を見つけてくれたから別にいいやくらいの気持ちだった。

過去どんな女性と付き合ってきたのだろう。方向音痴で段取りが下手だと叱られた経験でもあるのだろうか。

そんなこんなで食事をし、一緒に旅行してみたい、とか、お互いのタイプについて話した。

告白を受け入れたのになぜタイプを聞かれるのか不思議だった。
私は好きになった人がタイプなのだ。それ以外を求めるならしゅうたでなく別の人と付き合っている。
「一緒にいて楽な人が好きかな。…しゅうたのことだけど」と伝えた。大分私も浮かれている。

彼のタイプも多分話していたけれど、すっかり忘れてしまった。レモンサワー程度で忘れてしまう内容なのだから、酔った私は「なんだ、私のことじゃん」と思っただけだろう。

冷静に書くと本当に恥ずかしい。ただのバカップルだと思われてもなにも否定できない。

その日は遅かったので新宿駅まで一緒に戻って解散した。

続き↓

momokoara0402.hatenablog.com