僕の傘を探しに

26歳OLの雑記

綺麗な夜景と、汚い私のこころ【幕引きまでのカウントダウン最終回】

私はマッチングアプリで出会った28歳男性、Mさんと3回目のデートに来ました。森ビルで開催された「KAWS展」を見終わった後、私たちは森ビルの屋上へ向かいました。森ビルで開催されている展覧会を買うと、500円で屋上に入れるとのことでした。

スカイデッキという名前がついていたみたいです。リンク貼っておきます。

tcv.roppongihills.com



屋上へのチケットをMさんが買ってくれ、私たちは荷物をロッカーに預けました。

エレベーターで階を2つ上り、スカイデッキに到着しました。

見た瞬間、東京の夜景って、こんなに綺麗だったんだ。
こんな言葉が出てしまうくらい、目の前には美しい光景が広がっていました。

私たちは黙ってスマホを出し、カシャカシャと写真を撮りました。

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Mさんは、何も話しませんでした。沈黙をかき消すかのように、私は夢中で写真を取り続けました。昔Sさんが教えてくれた通りに、ピントを合わせ、明るさを調整しましたが、なかなかうまく撮れませんでした。苦戦している間、Mさんは写真を撮るのもやめ、なぜか夜景を眺めていました。

まさかだけど、ここで告白するつもりじゃないよね…?

この後、アクイーユで夕飯を食べることになっていますし、さすがにそのとき告白するよね?さすがに。

Mさんが「あっちも見てみようか。」と言い東京タワーの目の前から移動しました。今度はスカイツリーが小さく見えました。

移動してMさんは数枚写真を撮った後、また夜景を眺め始めました。

流石に様子がおかしいな。もしかしていい雰囲気になるの待ってる?

そんなMさんをガン無視して写真を撮り続けていると、「あのさ。最初のwithの秘密の質問、覚えてる?」と言われました。

覚えていませんでした。「質問?」と聞き返すと、「ロマンチックな雰囲気で告白されたいって言ってたよね。」と返ってきました。

そういえば、そうだったかも。「ああ。」と短く返事をしました。

「今、結構ロマンチックな雰囲気だと思うんだ。」そう言って、少しMさんは黙りました。

少しの沈黙の後「ももさん、俺と付き合ってください」と言われました。

 

ついに、来てしまった。


断らなきゃ。そう思った途端、突然頭痛がし始めました。

頭痛いし、断るの、今度にしようかな。一瞬、迷いました。
でもすぐに考え直しました。

今日は男性として見れないと伝えに来たのだから、逃げちゃだめだ。

私は「うーん」と言った後、もう一度黙りました。

そして勇気を振り絞り、「Mさんのこと、凄くいい人だと思うんだけど、男性としては見れていなくて…」と伝えました。

Mさんは、夜景を見たまま「そっか。大丈夫。そう言われるの慣れてるから。ごめんね。変な空気にしちゃって。」と謝りました。

「ううん。」Mさんは絶対に悪くない。それなのに、そう否定することしか、出来ませんでした。


Mさんは明るく「せっかくだから向こうからも夜景見ようか。せっかくだから。」と言って、私たちはさらに違う角度から夜景を見ました。

こういうとき、どうしたら良いのだろう。
この後、お店予約してしまっているし。

少し考えた末に、なるべく余計なことを言わず、必要最低限話すことに決めました。

そして夜景を見終わった後、私たちは森ビルを後にしたのでした。

森ビルを出てから、「せっかくだから、夕ご飯も食べて行こうか。」と言われました。

今思えば、「Mさんが私と一緒に居たくないなら、解散しよう」と言うべきでした。どちらでも良いなら、Mさんを気遣うべきです。でもそのときの私は冷静ではありませんでした。結局、「うん。」とだけ返しました。

気まずい雰囲気の中、気を遣ってMさんが話を振ってくれました。でも告白する前のようには楽しめませんでした。

Mさんが店まで案内してくれ、なんとかアクイーユにたどり着きました。

席に座った瞬間、義務感に駆られ始めました。

最後の機会だから、Mさんの話をきちんと聞かなければならない。不満でも、批判でも、なんでも良いのだから、聞かなければならない。Mさんが私に好意を寄せていると知っていて一ヶ月間遊びに付き合わせた代償を、償わなければならない。

気が重くなっていました。

それでもMさんと一緒にメニューを見ました。

Mさんは、以前だったらお箸をとってくれたりメニューを見せてくれたりしていました。でも今回はそうしてもらってはいけません。ここにいること自体、Mさんを弄んでいるのと同然なのですから。

なので私がおしぼりを取って向かいに座っているMさんが見やすいようメニューを広げました。

少し悩んだ後、私たちはオムライスを頼むことにしました。

Mさんはカレーのオムライス、私はトマトソースのオムライスを注文しました。

料理を待っている間、Mさんは「今日の写真送るね」と言い、ラインのトークルームに写真を3枚送ってくれました。

もう会わないから送らなくていいよ、とは言えませんでした。
黙って「ありがとう」と言いました。

アクイーユの店内は童話の世界のような雰囲気が漂っています。かわいらしい小物が飾られ、窓にはハロウィンシーズンだからなのかかぼちゃの絵が描かれています。さらに、ディズニーランドのイッツアスモールワールドのような曲が流れていました。
楽し気な雰囲気とは裏腹に、私たちは険悪なムードの中料理が来るのを待ちました。

待っている間、以前アクイーユに来たことを思い出しました。
前来たのは、3年前でした。ここは、3年前別れた元カレSさんと来た場所です。

店内を見渡しながら、懐かしいな。そう思っていました。

今回Mさんと座った席は入口に近い4人掛けのテーブル席でしたが、以前来た際はもう少し奥の方の席でした。

ここ、店内が少し広くて店員さんを呼びづらいんだよなあ。今も昔も、変わってない。Sさんも、「ここかわいいね」と言っていたのを思い出しました。前はオムライスなんてなくて、パスタかパンケーキしかありませんでした。やむを得ず私はクリームパスタと、パンケーキを注文しました。Sさんは、何を頼んでいたっけ。忘れてしまったけれど、2人ともお腹いっぱいで、パンケーキを残してしまいました。

3年前Sさんと一緒にアクイーユに行ったときの話はこちらからどうぞ。

momokoara0402.hatenablog.com

 

Mさんは、店員さんが運んでくるパンケーキを見て、「おいしそうだね」と言いました。食べきれなかった思い出があることは胸に秘め、「ああいうの、意外とお腹いっぱいになるんだよね」と返しました。


そうしていると先にたらこソースのオムライスが運ばれてきました。

どちらも頼んでいない料理でした。

店員さんが間違えてしまったのでしょう。私がなにか言おうとしたときでした。「いや、注文してないです」と怒ったような素振りでMさんが言いました。


完全に、八つ当たりです。本当は私に当たりたいのでしょうが、我慢していたのでしょう。

 

しばらくすると、先にMさんのオムライスが来ました。Mさんは「せっかくだから」と言って取り分けてくれました。今思えば、度々言っていた「せっかくだから」という言葉は、もう帰りたいと思ってしまう自分自身に言い聞かせていたのでしょう。

あまり取り分けてもらう気分ではない、とは言えませんでした。
また「ありがとう」とだけ言ってもらいました。

そして私の分のオムライスがようやく来ました。

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慌てて撮ったのでおしぼりが映り込んでいる

人の分を貰っておいて取り分けないのも変なので、Mさんの分を分けて渡しました。

本当は、たい焼きを食べてしまったのでお腹がいっぱいでした。

でも、気まずいので早く帰りたいという気持ちが勝ちました。

私はなんとかオムライスを平らげ、水を飲み干しました。


食べている間、「今回の反省を活かしていかなければいけないと思ってる。そのことを仕事にも活かします」と言われました。わざわざ直接言わなくてもいいのに、と思いました。今思えばMさんも冷静でなかったのかもしれません。

最後に、「なにか言いたいことがあれば、なんでも言ってください。」と言いました。

「なんか、(言い方が)強いんだよなあ。」と言った後、「ありがとうございました。」と言われました。顔が、怒っていました。それでも罵倒されずにすんでほっとした私は伝票を手にしたMさんに向かって手を差し出しました。


「何?ここはまかせろみたいな感じ」と言いながら、伝票を渡してくれました。

いくらでも払うから、もう帰らせてほしい。
お金で解決できるのであれば、そうしたい。

そう思って、最後は私が会計を済ませました。

そして、恵比寿駅に戻りました。

Mさんは日比谷線に乗るはずでした。
でも日比谷線の改札を通りすぎ、私が乗るJRの改札まで送ってくれました。

別れ際、「じゃあ、今日はありがとうね。」と言われました。

「こちらこそ、ありがとう。」そう言って私は改札を通り抜けたのでした。

駅を降りて、自宅に向かっている途中、告白されたときに見た夜景を思い出しました。

自分の気持ちにきちんと向き合わず、Mさんの好意に甘えてしまった私。私の心のように、汚いものがあるからこそ、あの夜景が美しいと感じることができるのだろう。

自分の気持ちを正当化しながら、新宿の夜空を見上げたのでした。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

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Mさんの記事をタイトル下にある「Mさん編」という名前のカテゴリーにまとめました。クリックするとMさんとのマッチング~デート3回分の記事が全て見れます。

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