ヒーローは遅れてやってくる
私はマッチングアプリで出会った27歳男性、Tさんと横浜で二回デートをし、その後LINEのやりとりを毎日していました。その中でTさんが現在私を含めた5人の女性とやりとりをしていることが発覚しました。
5人の女性とやりとりすることを、Tさんは「好きになった女性をエスコートしたり、余裕をもって恋愛するために必要な経験だ」と言いました。
Tさんは私のために努力してくれているのだ、と盛大な勘違いをしていました。すっかり機嫌は良くなり、「そこまで私の考えが及ばなくてごめんね。Tさんが、必要な経験だって思っているなら、全然いいよ!個人的にはエスコートなんてしなくていいし、気持ちが一番大事だって思っているけどね」と返しました。今思うと、少し上から目線のような言い方だったかもしれません。そのメッセージを送った後は、既読だけがついたままで、次の日の朝になっても返信は来ませんでした。
次の日は、土曜日でした。私は仕事でした。昨日言いたいことは言ったし、そのうち何かしら返信が来るだろう、と思い、深く気に留めずに出勤しました。
少し仕事がひと段落したのでTさんからLINEが来ているか確認しました。確認して、私は驚きました。Tさんから、長文の文章が送られてきたのです。
ところどころ同じ内容が繰り返し書かれており、かなり長い文章でした。感情的になって書いたのかもしれません。割愛してまとめると、下記の内容です。
電話のときや、最初のカフェのときから初対面なのに距離感が近すぎて、私のことが怖いと思っていた。今の感じで付き合う、付き合わないと選ぶのであれば付き合わないを選択する。昨日の他の女性との話はしないでほしい、ということに対して、どうしてそこまで干渉されるのか分からない。お揃いの香水を買われるのも、嫌だった。私自身、パーソナルスペースについての勉強が必要だと思う。私の過去の恋愛の話を聞いていると、少し立ち止まってから恋人になるか考えるべきだと思う。この場で怒りをぶちまけたり、他の人に愚痴を言ってこの件を終えるのではなく、一度振り返って考えてほしい。
既読をつけ、どう返信すべきか考えました。でも、何回読んでも、どう返信して良いのか分かりませんでした。返信は、お昼休憩のときにすることに決めました。
仕事中も、TさんのLINEで頭がいっぱいになっていました。同じ香水を買うのはやりすぎだったかもしれない。会って二回目で、腕を組むのも、近すぎたのかもしれない。だけど、公園からの帰り道、「腕組んでいい?」と確認して、「大丈夫」と言われた。次の日も、「ベタベタされるの嫌い?」と聞いて、「全然そんなことない」と言われていた。なのに、実は嫌だったんだ。Tさんは、嫌だと感じたことを、伝えることができない。その場で「やめて」と言われなければ、私はTさんが嫌だと思っていることに気づけないだろう。次からどうしたら良いんだろう。最初の電話や、カフェのときは、普通に他の男性と会うのと同じような距離で話しているつもりだった。パーソナルスペースをいくら勉強しても、私は無意識にまた近づきすぎてしまうかもしれない。そして、一番重要な、Tさんは今後私と関係を続けていきたいのかが文の中に入っていない。
今回は仕方ないか、と半ば諦めに似た気持ちで午前中の仕事を終え、コンビニで昼食を買った後、どう返信するか考えました。休憩はあと30分しか残っておらず、焦り始めていました。もう一度TさんからのLINEを読み、でもいざじっくり読むと受け入れられず、パニックになっていました。
どうしよう、どうしよう。早く、返信しなきゃ。「そうだったんだ。たくさん嫌な思いさせてごめんね。言われた通り、今度から気をつけるね!」そう返信しよう。
そう思ったのに、指は石のように固まり、思うように動いてくれません。
頭の中に、電車の踏切の、赤信号の表示が浮かんできました。
カーン、カーン、カーン。音も、聞こえたような気がしました。今は赤信号。この先危険だから、止まらなきゃいけない気がしました。でも、踏切の向こう側に、Tさんがいるのです。だから、私は早く渡りたいのです。渡るか迷っていると、元カレSさんの顔が頭をよぎりました。
かわらないで。ももちゃんのままでいて。
そう、聞こえたような気がしました。渡ろうとするのを、引き留められた気分でした。そしてSさんが1か月前に、言っていたことを思い出しました。「ももちゃんは、3年前より成長していると思うよ。成長っていうのは、自分の才や特徴を伸ばすこと。要は、自分らしさを深めることが成長だと思うんだ。」
本当に、Tさん言う、私がパーソナルスペースを勉強して変わるべき、という考えは正しいのか。Tさんは、感情的になって言っている可能性はないか。それに対してSさんは、感情的になって私にその言葉をかけたとは思えない。今後、私が迷わないように、その言葉をかけてくれたんだと思う。だから、「言われた通り、今度から気を付けるね!」と返信するのは、違うんじゃないか。私は、出会い系を始めてずっと、自分を変えなければと、躍起になってきた。昔より自分の考えを上手く人に伝えることができるようになった。性格も、ポジティブになった。でも、他のところは変えられなかった。変えたら、自分を全否定することになってしまうから。それ以上変わったら、私が、私じゃなくなってしまうから。
もう一度、踏切の向こう側を見ました。そこに、Tさんはいませんでした。渡った先には、私も、Tさんもいない、誰もいない世界が広がっているように感じました。
私は、踏切を渡れない。自分自身を、自分の中でまだ生き続けているSさんを捨てて、Tさんを選べない。
気づけば私は、「そうだったんだね。たくさん嫌な思いさせてごめんね。したら、次の新大久保でデートする約束はなしで、これから連絡をとるのもやめよう?香水はちゃんと捨てとくね!」と送っていました。
Tさんから、「こちらこそごめん。香水はどちらでも良いよ、さすがに捨てろって言えないよ」と送られてきました。私は、「(香水は)捨てる捨てる!」「今まで楽しかったよ!ありがとう!」と言い、最後にTさんから「こちらこそ楽しかったよ、ありがとう!」と返信がきました。
そして私たちは、その後連絡を取り合うことはありませんでした。
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今日のuber eatsは、キンパストーリーのチェダーチーズキンパと、ロゼトッポッキです!! pic.twitter.com/WNjjQGLOgl
— ももこ (@hjkt0402) 2021年8月29日
Tさんとのマッチ後~これまでの経緯はこちらからどうぞ。
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